第2章 地下格闘家Sさん

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なんとかミット打ちも終わった。 そして、息子のミット打ちが始まった。 息子は幼稚園の頃から、私と一緒にジムに通っていた。 「そんなんやったら、二度とバンテージなんか巻くな!ボクシングなんかやめてまえ!」 いつも、バンテージを巻いてからジムに行っていた。 ある日、ジムの駐車場に着いてから、行きたくないと愚図りだした息子。 気が長いほうではなかった私は、ついキツイ言葉を息子に浴びせかけてしまった。 その日を境に、ジムへ行かなくなってしまった息子。 あれから5年、今でも思い出すと胸が痛む。 そして今、私の闘う姿を見て何か感じてくれたらと、なんとかなだめすかして連れてきた。 5年の間、コンビネーションを打つ感覚を忘れて欲しくなかったので、息子の機嫌のいい時に、ミットを持っていたりしていた。 息子も久し振りだったけれど、なかなかいい動きをしていた。 今日の私の闘い振りを見て、何か感じてくれるだろうか。 ミット打ちが一段落し、次はスパーをし合う時間だった。
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