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「ちょっと、景斗ちゃん、聞いてよ! ひどいのよー」
「な、なになに」
「エスのおうちが~~~~」
景斗は玄関に鞄を置いて庭に回ってみた。するとエスの犬小屋が酷い有様になっていた。
まるで巨人が踏みつぶしてもしたかのように、バラバラに壊れている。
「クゥーン」とエスが尻尾を脚の間にいれて、所在なさげにその回りをうろついていた。
「な……っ」
「さっきお買い物から帰ってきたらこうなのよー」
「エスは? エスに怪我は?」
景斗はしゃがみこんで愛犬の体を撫でた。エスは鼻先で景斗の頬をつつく。
それは自分の住家がなくなって困り果ててどうにかしてくれと言っているようだった。
「エスは無事よ。でもすっごく怖がっちゃってて。どこの誰がこんなことを……。ねえ景斗ちゃん、これってやっぱりお巡りさんに言った方がいいのかしら」
景斗は壊れた破片を手に取った。何の汚れもついていない。この問答無用の破壊の仕方はあの悪夢のような夜を思い出させる。
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