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ルルシーを撫でながら、瑠璃子は冷めた口調で言った。その言葉に対し、海斗は何も言えずにうつむく。
「こんなガキみたいな見た目で、いきなり世間に出て行ったら、あたしはどうなるの……警察にあれこれ聞かれて、世間の人たちから変な目で見られて、その挙げ句にどうなるの? あたしは、どんな人生を歩めばいいの?」
「どうもならないよ。俺が一生、面倒みるから。いいか、金さえ積めば戸籍だって買えるんだよ。お前は、違う人間として生きればいいじゃねえか」
顔を上げて、海斗は言った。その瞳は優しさに満ちている。
すると、今度は瑠璃子がうつむいた。
「何よそれ……一生、面倒見るって。プロポーズみたいじゃない」
「俺はそのつもりだよ……俺じゃあ嫌かよ? 俺じゃあ、駄目なのか?」
そう言う海斗の表情は、真剣そのものだった。普段の軽さは、ひとかけらもない。鋭い眼差しで、じっと瑠璃子を見つめる。
すると、瑠璃子は視線を落とした。足元にいる、ルルシーを撫で始める。
「ねえルルシー、あのおじさん、あんなこと言ってるよ。こんな場所でプロポーズなんて、ムードってものを知らないのかなぁ。本当に困ったねえ……どうすればいいのかなぁ」
「悪かったな、ムードが無くてよ。でも、俺は真剣なんだぜ」
そう言った海斗に対し、瑠璃子は黙ったままルルシーを撫でている。
ややあって、顔を上げた。
「ありがと。でもね、少し考えさせて」
瑠璃子がそう言った直後、ルルシーがにゃあと鳴いた。
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