お前のこと、好きなんだよ?

5/11
前へ
/32ページ
次へ
「酷くないですよ。」 にこ、と翔は微笑むと俺の手を取り、立たせた。 笑顔を作っている翔の後ろには、閻魔大王が顔を覗かせていた。 ここで駄々をこねたらどうなるのだろうか? と考えるとブルリ、と身体が震えた。 「……………………。」 ムスッ、としながら布団から離れる。 「何ムスくれてんですか?」 と翔が顔を覗く。 不意打ちでキスができそうな距離に、心臓が高鳴った。 「なっ、何でもない!」 ドンッ!と翔を突き放すと部屋から出ていく。 今、また翔の顔を見たら今度こそ心臓が口から飛び出てしぬか、吐血してしんでしまいそうな気がした。 「……………も、餅つけ、餅つくんだ俺。」 走りながらブツブツと自分に言い聞かせる。 「それを言うなら、落ち着け。ではないのですか?」 耳元で聞こえた声に、振り返ると 笑顔で俺の後を駆けてくる翔がいた。 「ひぎゃぁ!」 色気も何も無い声を上げて、足を止めると翔もそこに立ち止まった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加