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「酷くないですよ。」
にこ、と翔は微笑むと俺の手を取り、立たせた。
笑顔を作っている翔の後ろには、閻魔大王が顔を覗かせていた。
ここで駄々をこねたらどうなるのだろうか?
と考えるとブルリ、と身体が震えた。
「……………………。」
ムスッ、としながら布団から離れる。
「何ムスくれてんですか?」
と翔が顔を覗く。
不意打ちでキスができそうな距離に、心臓が高鳴った。
「なっ、何でもない!」
ドンッ!と翔を突き放すと部屋から出ていく。
今、また翔の顔を見たら今度こそ心臓が口から飛び出てしぬか、吐血してしんでしまいそうな気がした。
「……………も、餅つけ、餅つくんだ俺。」
走りながらブツブツと自分に言い聞かせる。
「それを言うなら、落ち着け。ではないのですか?」
耳元で聞こえた声に、振り返ると
笑顔で俺の後を駆けてくる翔がいた。
「ひぎゃぁ!」
色気も何も無い声を上げて、足を止めると翔もそこに立ち止まった。
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