お前のこと、好きなんだよ?

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ニコニコと笑う翔とともに自室へと戻る。 「…………さて、今日は数学ですが 今の気持ちは?」 ニッコニッコと笑う翔を見ていて思った。 「酒でも飲んだ?」 「まさか、仮にも勤務中ですよ。」 だよね。飲むわけないよね。 「じゃ、なんでそんなニコニコしてる訳? 気色悪いんだけど………」 ジョワ、と鳥肌が立った腕を服の上からこすると 失礼な人だ。と言われてしまった。 「んなこたぁねぇよ。」 と扉を開けると 「そうですか。」 と華麗にスルーされてしまった。 「スルーかちくちょう。」 「ちくちょう?」 うぷぷ、と笑いながら翔がこっちを見る。 「言ってないからな! 何も言ってないからな!」 うがぁー!と威嚇すると 聞いてしまったし、言い逃れはできないだろうに。と言いたげな目で翔が部屋に入っていった。 「…………さぁて、だいぶ時間も押してしまいましたし みっちり、教えて差し上げますからね?」 「はひ……………。」 あ、俺の数学に関する学力教えてあげようか。 テストやったら赤点は確実だよ。 「坊ちゃん! 5の2乗は25ですよ! 何をどうしたら10になるんですか!」 バシンっ、と丸めたドリル集でテーブルを叩くと翔は俺を叱る。 「わ、わかるかっての! むしろ!数学なんて社会的にいらないだろ! 歴史も化学も!」 国語と英語と地理さえできりゃ、生きていけるだろ! と噛み付けば、翔は青筋を額にたくさん浮かべて 俺を見た。 「では、これから数学と化学、歴史は一切教えないことにしましょうか。 あなたが家を継いで仕事を始めた時に泣きついてきても知りませんからね」 翔の言葉にちょっとだけ想像して、恐怖する。 「やっぱり教えてください。」 将来、泣きたくないです。と素直にいえばうん。と翔は頷いて、再び勉強が始まった。 鬼畜だった。
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