お前のこと、好きなんだよ?

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「さて、と。」 坊ちゃんの勉強も終わりましたし 掃除でもしましょうか。 ごきり、と肩を1度鳴らして掃除用具を取りに向かう。 やれやれ、好意を持たれるのはいいがあそこまで分かりやすすぎると…………… 遊んでしまいたくなる。 「……………ほんっと。分かりやすすぎますよ、坊ちゃん。」 小さくつぶやいてモップやら雑巾やらを手に廊下を歩く。 顔を近づけた時の、あの頬の染まり様と言ったら………… 「ああ、面白かった。 さっさと思い出も伝えてくれたら 楽なんでしょうけどねぇ。」 私はよく、からかい上手と言われてしまう。 しかし、面白い反応をする人が悪いのですよ。 その次も、そのまた次も………… 同じ反応を見せてくれるから それがたまらなく面白い。 大きな窓を丁寧に拭きながら 次はどんなことをしようか考える。 すると、キッチンから走ってきたらしい龍太に 「翔ー、新しいメニュー作ったんだけど 試食してくんねぇか?」 と声をかけられた。 「いいですけど、何を作ったんです?」 「デザート。」 「ほぅ。」 声を上げると、龍太が嬉々として 「食用花を買ってきたんで取り入れたんだよ。 そしたら案外上手くいってな! 坊ちゃん用のデザートなんだが、気に入ったら 沢山作ってやろうと思ってさ」 ガーデニングしたいんだよな。 と龍太は笑った。 「多趣味なことはいいことですよね。」 と笑ってみせると 「お前もなにか趣味を見つけろよ!」 と背中を叩かれた。 「趣味、ですか。」 ふむ。と考えてみせる。 「坊ちゃんで遊ぶことでしょうか? 面白いんですよね。」 ふふふ、と口に手を添えて笑ってみせると 「なかなかによろしい趣味をしているようで……」 と龍太が引いて見せた。 「失礼ですね。 これでも、主従関係を持つものとして最低限の礼儀はわきまえているつもりですよ。」 と言ってみせると 龍太はへ、へぇー。とあさっての方角を向いた。 「とりあえず仕事が残ってるので早めに終わらせたいんですが?」 「わぁってるって。」 龍太はそう言うと、キッチンへと姿を消した。 入るとバターや砂糖、花の薫りにムネヤケがした。 「これなんだわ。」 目の前にオペラが置かれた。
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