両片思いな………

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「にーちゃん、にーちゃん。」 「ミサキ。遅かったな」 隣の家に住んでいる5歳年上の京にーちゃん。 京にーちゃん、基、城谷 京。 俺は、小さな頃から彼の後ろをアヒルの子のようについて回っていたらしい。 「…………京にーちゃんの匂いがする。」 隣の家でよかったと思うこと。 それは、大好きな京にーちゃんの部屋に 許可さえ取れば何時でも上がり込めること (時間はちゃんと考える) 京にーちゃんの部屋に上がり込んで、彼のベッドに突っ伏している俺の名前は 赤根 ミサキ。 今年、16歳になったばかり。 「ミサキー、お前人のベッド占領してんじゃねぇよー」 ジュースを持って部屋に入ってきた京にーちゃんは盛大にため息を吐くと 「ほれ、おりたおりた。」 と言って、ジュースを小さな丸テーブルに置いて 俺の身体を揺すった。 「ええー、京にーちゃんのベッドで寝たいー」 子供みたいに我侭を言えば、 「落とすぞ、テメェ!」 とベッドから引きずり降ろされた。 「既に落とされてる! 痛い痛い!お腹!お腹擦れてる! カーペットに擦れてていたいから!」 と首を横に振りながら、抵抗すると 「自業自得、だな?」 と彼は二ヒッ、と笑った。 「……………ここのカーペット ほぼ床みたいなもんなんだから配慮しろよー」 腹をさすりながら京にーちゃんを睨みつければ 「給料日前だからカーペット買い換えられねんだよ。」 と彼は俺にジュースを注いだらしいコップを差し出してきた。 「……………スン、」 「野菜ジュース、好きだっただろ?」 匂いを嗅ぐと、京にーちゃんは柔らかい笑みを浮かべた。 「む、好きだけど。」 それを受け取ると 「コーヒーが飲めりゃあ、美味いの淹れてやるのにな。」 と彼は苦笑し、ジュースを1口飲んだ。 ゴクリ、と喉仏が動くのを凝視していると 「人が飲んでるとこ見て楽しいか?」 と質問された。 「べ、べっつに!」 ぐぴっ、とジュースを口に含むと 優しい野菜の味が、口いっぱいに広がった。 「♪」 この時間が、俺は好きだったりする。 だって、京にーちゃんを今だけ独り占め、できるから。
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