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「候補生集合!」
号令がかかって28名の新任少尉が真夜中のテント前に集合した。サーチライトが十字砲火のようにフル装備で立つ十代の候補生を照らしている。秋だが夜の風はかなり肌寒かった。タツオのところからはまぶしくて壇上の兄・逆島継雄(つぐお)少佐の顔が見えない。逆光のシルエットがわかるだけだ。
「きみたち完全に目覚めているか。本土防衛決戦は昼間におこなわれるとは決まっていない。本番も真夜中の可能性もある。訓練開始までに身も心も覚醒させておけ」
「はい」
28名の声がそろう。
「きみたちにはこの演習場にきてから、休日を与えていなかった。今回は深夜の戦闘訓練なので、明日は完全休養をくれてやる」
誰も歓声をあげるものはいなかったが、喜びの低いため息が何人かから漏れた。
「ただしそれは敵の猛攻に夜明けまで耐えられたらだ。できなければ、明日は座学8時間の通常授業だ。夜明けはマルゴーヨンサン(05:43)である。その時間まで戦えるという者、手をあげよ」
これまでの記録を大幅に上回る3時間超も闘い続け、生き延びなければならない。実際に可能だろうか。タツオが頭のなかで考えていると、サイコは誰とも目をあわせずまっすぐに右手をあげた。
「わが東園寺(とうおんじ)班におまかせください」
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