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ずっと黙っていた副官のタツオが口を開いた。
「偽の本陣は、ぼくとジョージ、それにソウヤさんとマルミちゃんだ。ソウヤさんは軽機関銃、マルミちゃんは狙撃銃を用意してくれ」
タツオはサイコの厳しい顔を見た。副官の仕事をきちんとしなければならない。作戦前に最後の言葉で兵の英気をあげるのは指揮官の役割だった。
「東園寺少尉、お願いします」
サイコがうなずくとショートボブの黒髪が揺れて唇(くちびる)にかかった。濡れたように光っているのは、リップクリームだろう。女性訓練生の間では、カラーリップが流行だった。唇に貼りつく毛先を気にもせずに指揮官がいった。
「わたしたちの目標は、夜明けまで生き延びること。最優秀のこの7名で不可能なら、可能性はゼロだ。他の候補生も進駐軍のお偉がたも見ている。明日の完全休養、絶対に勝ちとるぞ」
男たちの声が揃(そろ)った。
「おーっ!」
タツオたち東園寺班の7名は真夜中の戦闘訓練の準備にとりかかった。
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