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「サシャ様! 良かった。ご無事でしたね」
扉が開くと同時にサシャの無事を安堵するベランジェ高大神官様の声が聞こえて、サシャ様は驚きの表情を浮かべた。
「ベランジェ高大神官様・・・・・・」
神殿でのサシャ様の後見であるベランジェ高大神官様は、傷一つなく、将軍の前で膝をついた。
「閣下、お約束通りサシャ様の身柄をあずかりにまいりました」
ベランジェ高大神官様は、幾分緊張した表情だったけれど、それが何故かは将軍の言葉でわかった。
「ああ、お前の働きは良かった。あっという間にこの国を手に入れることが出来た――。だがな、お前は嘘を吐いたな」
この国を裏切ったのは、神殿だったのだ。理由として私が思いつくことといえば、サシャ様のお母様のことだ。神殿の巫女を無理やり奪い、妻とはせず、国王は捨てたのだ。
サシャ様のお母様は、ただの巫女ではなかったという。美しさだけではなく、神力と呼ばれる力で人を癒すことも、神の元にいくための道に迷った魔物と呼ばれるものを退治することも出来たというのに、国王に乙女を奪われてからはその力の全てを失ってしまったのだ。
しかもベランジェ高大神官様の婚約者でもあったという。
将軍は腰かけていた机から立ちあがり、握っていたサシャ様の手を引いて腰を抱きよせた。
「何を――。私は嘘など――」
ベランジェ高大神官様は、困惑に目を細めらて将軍を仰ぎ見た。
「お前は、サシャ・ヴァレール第五王子の命を嘆願した。その時にいっただろう。第五王子とはいえ、神殿で過ごしたきて既に忘れ去られた状態だと。なんの役にも立たない王子だと言ったな」
ベランジェ高大神官様は頷きそれを肯定する。
「ベランジェ様、酷い・・・・・・」
私は発言を許されていなかったが、思わず非難の声を上げた。サシャ様の瞼が瞬いて、伏せられた。
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