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私は、やっぱりこの男が嫌いだ。いや、男自体が大嫌いだ。生きてきて、ろくなことはなかった人生で、サシャ様以外の男はやはり私には敵であり、恐ろしい怪物のようだった。特に、兵士だからだろうか、ブラウンフェルスの男は皆大きくて、ごつくて、見ているだけで気持ちが悪かった。
私は、サシャ様の腕を拘束した男に腕をとられて、非常に歩きにくい(でかいからね)まま、神殿をでた。
神殿から王宮に入るには、一度外に出ることになる。サシャ様の顔が強張って、視線の先にサシャ様の家族である王、王妃、兄弟たちが躯となってさらされていた。王や王妃を諫めることができず、国を混乱に陥れた重臣達、将軍達。
血の匂いが噎せかえっている。
「グッ・・・・・・!」
私は堪らず、口元を覆った。今日食べた果物が、迫上がってきて、食べ物を大事にしている私はかなりショックだった。涙目で、吐ききったところを私を拘束していた男がハンカチを渡してくれた。どうやら口をぬぐっていいようだ。そっと背中を擦られて、私は緊張に身体を固めた。
どうしてもサシャ様以外の男に触られるのは駄目なのだ。男は、それを知ってかわからないが、私を掴んでいた手を離してくれた。
「ララ、私の匂い袋をあげよう」
サシャ様の胸元のポケットにはいつも匂い袋が入れられている。手を縛られているからサシャ様は、男に匂い袋を出してもらって、それを私に渡すように頼んでくれた。サシャ様、無防備すぎます! と叫びたかったけれど、私は黙ってそれを受け取った。
「貴方の家族でしょう?」
何も知らない男は、そう言った。家族、家族というものは血のつながりだけではないだろう。もう何年も会っていないあってもろくなことにならないだろう家族を思って泣けというのかと、私は非常にむかついたから、男を睨みつけた。男は、私の視線など気にもならないような涼しい顔をしている。
「もう十年以上会っていなかったので」
サシャ様の言葉に男は、黙っていた。後は何も言わないから、規則正しい足音だけが、響いていた。
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