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「神殿で育つとこういうものなのか?」
「我が国では、こんな細くて役に立たない男は女の代わりにもならん」
「まぁ閣下の好みの色ではありますが――」
サシャ様は、顔色も変えずにただ言葉を受け入れていた。それを筋肉馬鹿の男どもは嘲るのだ。
「この国の男は、本当に情けないですな」
この国と一括りにされる屈辱にサシャ様は無言で耐えている。それが私には辛かった。
「やめて! サシャ様は、あなた達みたいな野蛮人じゃないのよ!」
「女に庇われて・・・・・・」
情けないと吐き捨てられるように言われても、サシャ様は静かに目の前の男を見つめていた。
「閣下、こんな顔だけの男など・・・・・・」
「お前達に許可をもらうつもりはない――」
屈強な男達を従わせるものが、将軍にはあった。ただ王族であるというだけではないのだろう。その彼に、サシャは頭を下げて首を差し出した。
「なんのつもりだ?」
「私は貴方に所有されるつもりはないのです。どうぞ、この首を――」
サシャ様に手を伸ばした男は、首を掴んでサシャ様の顔を上げさせた。驚いたサシャ様をいやらしい目で凝視して、口付けたのだ。
「お前がどう思おうと、俺には関係がない――」
サシャ様の唇を味わう様子が後ろからでも手に取るようにわかる。
将軍は、いっそ優しいと思われるほどゆっくりとサシャ様に口付けるのだ。首を固定しているてはゴツイのに、その手が器用にサシャ様の襟元を撫でる。
私は堪らず目を閉じた。将軍がサシャ様を味わうように唇に吸い付く音が鳴る。人が大勢いるはずなのに、その音は私の耳に響いた。
「くっ!」
こらえきれないような声を上げたサシャ様。サシャ様は、色ごととは全くの無縁の世界で生きてこられた。どれほど拒んでもあのサシャ様の太ももぐらいある腕を払うことは出来ないだろう。
見てはいけない。サシャ様の羞恥を想えば、いっそ今私が先に息絶えるべきなのかもしれない。
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