華に狼、月に暁

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 再び私の腰を引き寄せたなっこは、綺麗にマニキュアを塗った指先でツッと私の唇をなぞる。  長年一緒にいる私でさえも思わずゾクッとしてしまう仕草に、課長が異常を察しないわけがない。 「華の唇は私のモノなのよ?  もっと注意して?」 「ちょっと待て。それはどういう……」 「課長、これには日本海溝並みに深いわけが」 「文字通りの意味よ。  華は私のモノ」  ワタワタとなっこの腕から逃げようともがくのに、細腕のどこにそんな力があるのか、なっこはさらに私に体を寄せてくる。  それに課長が表情を険しくしないわけがない。 「華に手を出すなら、その前に私の屍を越えていってもらわないと。  ねぇ、華?」 「その挑戦、受けて立つ。  屍にされても文句を言わないことだ。  ねぇ、華さん?」  課長とのフラグはギリギリ回避できたはずなのに、何やら新たなフラグが立てられたような気がしてならない。  ……明日の仕事はまず、あの書類の決裁から初めて………  私を挟んで二人の視線がバチバチと火花を散らす中、間にいる私が現実逃避に走ったことは言うまでもない。 《To be Continue……?》
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