華に狼、月に暁

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『僕の目を見なさい、華さん』  視線恐怖症の私を、課長は徹底的にしごくことにしたらしい。  あの日以降、私は何かと理由を付けて『僕の目をしっかり見なさい』と迫られては逃げだす日々を送っている。 「あ……あれは!  私の視線恐怖症をスパルタで叩き直しているのであって、迫られてなんか……!!」  そう、ギリギリの所で、そういうフラグは回避しているはずなんだ。  いや、別に佐藤さんが嫌いっていうわけじゃないんだけど。  む、むしろ、す、すすすす……好き、なんだ、けど! 「いや、全然フラグ回避できてませんから。  むしろフラグビンビンですから」 「だから! 何のフラグがっ!?」  だって、困る。  そんなフラグが成立したら、仕事が手に付かなくなるに決まっている。  自分が仕事とプライベートをスパッと切り離せるような器用な性格じゃないことは、誰よりも私が一番よく知っている。  だからそういう展開になったら、きっと私は課長を意識しすぎて、仕事どころじゃなくなってしまう。  だから今は、そういうフラグが成立したら困る。
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