華に狼、月に暁

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「華がいつもお世話になってます」  カチャリとドアが開いて、スラリとした足がまず姿を見せた。  どうして立っていられるのか分からないほど細くて高いヒールの靴。  そこから続く足はなまめかしいラインを描いたままスカートの中に消える。  ジャケットの上からでも分かる、魅惑的なボディ。  運転用のメガネを片手で外したその下には、『女神』という表現がぴったりの強気で妖艶な美貌。  キッチリアップにされた髪からほつれた後れ毛がフワリと夜風になびくたびに、男と言わず女まで惑わす甘い香りが広がる。 「華の幼馴染にして親友にして同居人、同期入社生、秘書課所属、暁夏子(あかつき・なつこ)」  その全てが武器であることを自覚している私の親友にして同居人は、挑発的に微笑むと、ドアの陰に隠れようとする私を引っ張り出してしなだれかかってきた。 「アナタの劣情、全力粉砕するつもりだから、以降お見知りおきを」 「なっこ、劣情って……!!」 「華は無自覚すぎるのよ。  今まさに襲われそうになっていたのに」
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