119人が本棚に入れています
本棚に追加
「お帰りなさい、武さん」
何事もなかった顔で、玄関まで出迎えてくれた。
よそよそしさもなく、全くいつも通りだった。
「……ただいま」
何か言わないと気まずい、と思う暇もなく将志はキッチンに消えた。
うやむやに、していいのか。
いや、それでは私の気がすまない。
「将志」
消えた背中を追いかけた。
「あ、もうできるから。ちゃぶ台だして座って待ってて」
「あのさ……、今朝のこと」
「いいよもう、誕生日プレゼントなんて素直に受けとる武さんじゃないよね」
わかったようなことを言って。
「ごめん。本当に」
「いいって、もうわかったから」
こうやって、お互いをわかりあって、揺るぎない間柄になるのか。
こんなちいさな、ケンカとも呼べないようなすれ違いでも。
わかることは、ある。
言わなければ、伝わらないこと。
「戻って……くれて、ありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!