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返事がないのでそっと近づき、背中から抱きしめる。
「君と一緒に暮らせてることも、毎日の手料理も、プレゼントだと思ってるから」
将志が顔を真っ赤にしてうつ向いた。
……可愛い。
こんな将志を毎日見て暮らせるのだ、これ以上なにを望めと言うのだろう。
ちゅ、と派手に音をさせて頬に触れ、将志から離れた。
ちゃぶ台を展開させて部屋に待機していると、いくらか落ち着きを取り戻したらしい将志が夕食を並べていく。
細やかな気遣いのわかる見た目も美しい和食で、器も木目が鮮やかに浮かんだ和漆器だ。
「全部は乗らないんじゃない?」
「乗ります」
その自信は、まるで前もって確かめましたから、とでも言いそうだ。
ただそれは、私ひとりぶん、の計算だったらしい。同じものが向かいに並ぶことはなかった。
「店を出す時の試作メニューみたいだね」
「違います。武スペシャル御膳。あなたにできる、今の俺の全部です」
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