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そう言えば、2年前の誕生日に将志…初男がくれたのはビジネスホテルの夜景だった。
その時も、今の俺の精一杯、とか言ってたような……。
「将志くん、私の誕生日って、君が全力見せる日なわけ?」
「だって……もっと俺に惚れてほしいし……、去年は受験のせいで何もできなかったから……」
確かに、放置された記憶はある。
「君のぶんがないけど?」
「俺は作りながら味見してたから、なんか腹減ってなくて」
ここが店ならそれで問題はない。
しかし、目の前にいるのは私という恋人で、客ではない。
「一人飯の寂しさを、君が知らないわけないだろ?」
あ、と自分の口を押さえた。
「君と一緒に食べたかったな……」
いつもなら言わない本音を、つけ足した。
「すいません!!」
座っていた姿勢のまま頭を下げたため、土下座みたいな形になった。
「……いいよ、別に」
いただきます、と手をあわせてから漆塗りの箸を手にとる。
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