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「どんな人なの?
お前のことを『愛してる』って言ってくれた人って?」
先輩が笑顔で聞いてくれた。
「っと、普段はホワンとした感じだけど、本当は頭がすごく切れて。
俺の事、いつも甘えさせてくれるんですよ」
アイツの笑顔が浮かんだ。
「へー」
「ソイツが俺の側にいてくれたのと、12年という時間が漸く先輩に会いたいって思わせてくれたんだ」
「うん」
「この間ソイツも俺の手を両手で包んでくれてさ。
先輩よりも、もっと温かかった」
俺が先輩に笑いかければ、先輩も「そうか」と言って笑ってくれた。
「俺、今すごく幸せなんですよ」
互いに目を合わせて微笑んでいた。
間もなく目の前がひときわ明るくなり、駅に着いた。
「今日は、来てくれてありがとう」
「こちらこそご馳走様でした。
千春さんと美空ちゃんによろしくお伝え下さい」
改札口の近くで先輩と笑顔で挨拶をする。
……会いに来て良かった。
そう思った時だった。
「……あのさ」
先輩が真剣な顔をして俺を見た。
「はい?」
先輩は一度視線を下に向けた後、もう一度しっかり俺を見た。
「またお前の事、セリって呼んでいい?」
「先輩……」
「みんなで笑い合っていた頃のように、セリって呼んでいいかな?」
俺は先輩に笑顔を向けた。
「もちろんですよ。
あの頃のように、俺を一番可愛い後輩にして下さい」
俺の返事を聞いて、先輩が笑顔になった。
「親友じゃなくていいの?」
「本当の一番の親友は大石先輩でしょ?
俺は二番目の親友より、一番可愛い後輩がいい」
「うん、分かった。
セリは俺の一番可愛い後輩で、無二の親友な」
先輩が笑顔でそう言ってくれた事を、本当に心から嬉しく思って。
そんな自分も笑顔を先輩に向けていた。
この時分かったんだ。
先輩との関係をrestart出来たって。
俺は、先輩の後輩でもあり親友でもある特別な友人で。
もう、過去の恋を引きずる事はないって。
「またな」「またね」
手を差し出してくれた先輩と握手を交わしながら、
もう二度と言うことはないだろうと思っていた「またね」を先輩に言えて……。
ずっと胸に抱えていたわだかまりが解けていくのを感じていた。
改札を通り、もう一度先輩の方を振り返った。
お互いに手を挙げて笑顔で別れる俺達に、新たな男同士の固い絆を感じていた。
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