朧月夜と春風と

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「あ、先輩着いたよ?」 「どこに?」 住宅街を抜けたところが見晴台のようになっているらしく、小さなベンチが一つだけ置かれているのが見えた。 「先輩、こっちこっち」 そう言って彼は俺の手を握り早歩きになる。 そうしてベンチの側までくると 「ほら!」とその先の景色を見るよう目で合図してきた。 「!」 「どう?」 「凄い……! 綺麗だな……!!」 眼下に見えたのは幹線道路沿いに街灯の光を受けながら続いている桜並木と、その横にある工場らしき大きな建物の周辺に植えられた沢山の桜が、同じく常夜灯の明かりを受けて夜目にも白く輝いていた。 「こんな景色が見れるなんて……」 「もし公園のライトアップに間に合わなかったら、先輩と一緒にこれを見たかった」 そう言って彼は肩を抱き寄せてくれた。 「……じゃあ、歩こうって言ったのは」 「うん。これを見せたかったから」 「ありがとう。 凄く綺麗だ」
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