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俺は先輩に笑顔を向けると
「Congratulations on Your Wedding!
先輩の新たな人生の門出に祝福を。
末永くお幸せに」
「芹沢……」
先輩はとても驚いた顔をしていた。
「大石先輩に先輩が結婚するって聞いてから、ずっと伝えたいって思っていたんだ。
だけど……
その時の俺にはまだ、先輩と付き合っていた日々が昨日のように思い出されて。
何年もかかったけど、ようやく先輩との恋を過去のものと思えるようになったんだ。
遅くなっちゃったけど、俺からのお祝いの言葉、受け取ってください」
「芹沢……。
ありがとう!」
そう言うと先輩は俺をギュッと抱きしめてきた。
今度は俺の方がびっくりして
「ちょっ、先輩!」
と慌てて言うと、
「うん。分かってる。
でもマジで嬉しくて……」
そう言うと先輩は、抱きしめてくれていた腕を離してくれた。
「ありがとう。
他の誰よりも、お前から言われたのが一番嬉しいよ。
ホントにありがとう」
そう言って微笑んでくれた先輩の目は、薄明かりの下キラリと光っていて。
俺は「先輩……」と言いながらハンカチを渡そうとしたんだ。
「俺はいいから、お前が先に使えよ」そう笑われて、自分も目が潤んでいる事に気がついた。
「あ、ごめん」
恥ずかしさもあって、慌てて目にハンカチを当てている俺に、先輩はあの頃のように頭をポンポンしてきた。
「あの時言ったけど、お前の事は本当に大切な存在だと思っていたんだ。
だからこうやってまたお前と話せるようになって、本当に嬉しいよ」
先輩が以前と同じように笑ってくれたのを見て、俺も笑顔を先輩に向けた。
「俺もやっと
“まだ12年”から“もう12年”
に出来そうです」
先輩がまた微笑んでくれた。
「芹沢。本当に今日は来てくれてありがとう。
時間大丈夫か?」
「あ、そろそろ行かないと」
「うん」
歩きだした俺に、先輩が横に並んで歩いてくれていた。
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