746人が本棚に入れています
本棚に追加
/576ページ
暫く会話をするのも忘れ、その景色に見入っていた。
それはこの時期だけの儚く幻想的な夜景であって、切なさと優しさの両方が胸に溢れ出るような気持ちにさせられた。
「ジュン、
……また来年も連れてきてくれる?」
「もちろん。
毎年デートしに来よう?」
「ありがとう」
彼を見れば優しく微笑んでくれて、自分も幸せな気持ちになりそうっと彼に頭を寄せてみた。
「ねー先輩。
今夜は泊まっていってくれるでしょ?」
「……いいの?」
「いいに決まってるよ。明日は?
どう?」
「明日って、明日もってこと?」
「もちろん明日も、ってこと」
「でも日曜から出張だろ?」
「大丈夫だから。夕方からだし。
それまで先輩と一緒にいたい」
「……うん。
俺もお前と、一緒にいたい」
「良かった。
実は明日レストラン予約してあったんだ」
「え?」
「明日の方が仕事無いの確実だったから。
先輩、明日はゆっくりデートしよ?」
「うん」
「じゃあラーメンでも食べて帰りますか?」
「ああ」
「それで一緒にシャワー」
「それはダメ」
「えーっ」
「それはダメだけど……
隣で一緒に寝てもいい?」
「当たり前でしょ?
俺の隣はいつも祐也先輩の為に空けてあるんだから。
いつでも甘えていいからね?」
「ん、ありがとう」
年月が巡り、再び春の風が幸せを運んでくれた。
それは温かく優しくて。
ずっと大切にしたいと思った。
そうして淡く輝く朧月夜の下、この想いを形にする様に、そっと口づけを交わした。
《完》
最初のコメントを投稿しよう!