朧月夜と春風と

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暫く会話をするのも忘れ、その景色に見入っていた。 それはこの時期だけの儚く幻想的な夜景であって、切なさと優しさの両方が胸に溢れ出るような気持ちにさせられた。 「ジュン、 ……また来年も連れてきてくれる?」 「もちろん。 毎年デートしに来よう?」 「ありがとう」 彼を見れば優しく微笑んでくれて、自分も幸せな気持ちになりそうっと彼に頭を寄せてみた。 「ねー先輩。 今夜は泊まっていってくれるでしょ?」 「……いいの?」 「いいに決まってるよ。明日は? どう?」 「明日って、明日もってこと?」 「もちろん明日も、ってこと」 「でも日曜から出張だろ?」 「大丈夫だから。夕方からだし。 それまで先輩と一緒にいたい」 「……うん。 俺もお前と、一緒にいたい」 「良かった。 実は明日レストラン予約してあったんだ」 「え?」 「明日の方が仕事無いの確実だったから。 先輩、明日はゆっくりデートしよ?」 「うん」 「じゃあラーメンでも食べて帰りますか?」 「ああ」 「それで一緒にシャワー」 「それはダメ」 「えーっ」 「それはダメだけど…… 隣で一緒に寝てもいい?」 「当たり前でしょ? 俺の隣はいつも祐也先輩の為に空けてあるんだから。 いつでも甘えていいからね?」 「ん、ありがとう」 年月が巡り、再び春の風が幸せを運んでくれた。 それは温かく優しくて。 ずっと大切にしたいと思った。 そうして淡く輝く朧月夜の下、この想いを形にする様に、そっと口づけを交わした。 《完》
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