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「おーい、ヒメ!!いいもの見せてやろうか?」
「なあに?ゴンゾーくん」
権蔵が虫かごを姫の目の前に突き出して見せた。
「え、虫なの!?嫌だ~アッチ行って!!」
姫は虫が苦手だった。
「弟が珍しい蝶々を捕まえたんだよ!ちょっと俺ダチに呼び出されたから、預かっていてくれよ」
「え……そんな………」
姫は権蔵が自分に会いに来てくれたんだと思っていたので、ガッカリしてしまった。
「ゴンゾーくんの好きなトマトジュース用意しているのに……」
「わりぃな、ヒメ。戻ってきたらもらうから!じゃ、くれぐれもその蝶々逃がすんじゃねえぞ?」
権蔵はあっという間に走り去ってしまった。
珍しい蝶々を残して。
「本当、初めて見たよこんな蝶々。でもなんだか、蝶々っていうよりも……」
『助けて』
姫の耳に何か聞こえたような気がした。
『ねえお願い!私をココから出して!!』
助けを求める声のようだ。
「ココからって、まさか、この虫かご?なんてね~」
そう笑って呟いた後に虫かごを覗きこんだ姫。
珍しい蝶々?果たして本当にそうなのだろうか……。
『ヒメ、私を逃がして!』
今度ははっきりとその言葉を聞いた。
目の前で喋ったその不思議な生物を見て、姫はとても興味引かれたのだった。
「…ねえ、あなたは一体何者なの?蝶々なの?」
『違うわ。私の名前は"エリザベス"っていうの。蝶々なんかじゃない。私は……妖精なのよ』
妖精なんて架空の生き物のはずだ。
姫にはエリザベスの言っている事が信じられなかった。
「妖精なんて今まで見た事もないし。私、夢でも見ているのかな?」
ほっぺたを思いっきりつねって見たら……痛かった。
『私たち妖精は森の中で暮らしているの。今日、小学生が理科の授業で森にやってきたの。仲間はみんな上手く逃げたり隠れたりしたのに、私だけ逃げ遅れた。それで権蔵の弟の新蔵に捕まってしまったのよ』
「ふうん、シンゾーくんにね。じゃあどうしてシンゾーくんじゃなくてゴンゾーくんが……」
エリザベスを持って来たのか、姫には解らなかった。
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