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『あなたに見せたかったんじゃないの?でも私にとっては好都合だったわ。ねえヒメ、早く私をココから出して!!森で仲間たちが心配してるはずなの。早く帰らなくちゃ!!』
しかし、権蔵からは『絶対に逃がすな』と言いつけられている姫。
そう簡単に逃がす訳にはいかないのだ。
「可哀相だけど、ゴンゾーくんとの約束を破る訳にいかないわ。ごめんねエリザベス。ゴンゾーくんには私からも大事にしてもらうように話してあげるから……」
妖精のエリザベスは期待を裏切られ、悲しげな顔になった。
しかし、まだ諦めてはなるものかと姫を説得してきた。
『ねえ、お願い!!もし逃がしてくれたら、ヒメが欲しいものを1つだけ必ず手に入れてきてあげるから』
「え、私の欲しいもの?妖精ってそんなことができるの?」
欲しいものをくれるという甘い誘惑に心動かされる姫。
もしも、それが叶うのならば、ゴンゾーとの約束なんて破ってしまってもいいような気さえしてきたのだ。
『どう?悪い話じゃないでしょう?本当は人間相手にこの力を使うのは禁じられているけれど、緊急事態だもの。さあ早く出して!!』
だけど、信じてもいいのだろうか?
もし虫かごからエリザベスを出してしまったら、そのまま約束なんてまるでなかったことのように飛んで行ってしまうんじゃないかと姫は勘繰った。
「エリザベスがきちんと約束を守ってくれるっていう保証がないから、どうしたらいいのか悩む……」
『私たち妖精は人間とは違って嘘吐いたりしないのよ。約束は守るわ。私が虫かごから出られない以上、あなたの欲しいものは手に入らないわよ?それでもいいの?』
しばらくじっくり考えた姫は、ゴンゾーとの約束よりもエリザベスとの約束を取る事に決めた。
虫かごの扉を開けると、エリザベスが待ってましたとばかりに外に出てきて姫の目の前をゆらゆらと漂いながら言った。
『助けてくれてありがとう!約束通り、ヒメが欲しいものを1つだけ手に入れてあげるわ。さあ、あなたは何が欲しいの?』
姫が欲しいもの、それはたったひとつしかない。
言うのはとても恥ずかしいけど、思い切って打ち明けようと姫は心の中で決心した。
「私が欲しいのは、ゴンゾーくんの心。彼のハートが欲しいの!!」
ちょうどその時、権蔵が戻ってきたようだった。
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