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鉄人と一言で言っても、何を基準にすればよいのかわからない。
「そろそろ、何かいい案はないか?どうせ霊長類かどうかすら怪しい連中達なんだ。シンプルなのを頼むよ」
放課後、生徒会室では美形の生徒会長が足を組み、普段は陽気な目を細めた。
かれこれ開始から一時間鉛筆を指で回しやっと口を開いたもんだから、皆はゴクリと唾を飲む。
「遅れてすまない」
その時、重苦しい空気の中、副会長の藍原慎之助が戸を開き席に着いた。
呼吸すら忘れていた者は、ハッとした顔で空気を大量に吸い込んだ。
「藍原、来てすぐですまないが、今回の鉄人祭について何か良い案はないか?」
「案と言われても……ただ、祭と付くなら、垣根を越えてやってもよいのでは?と思ったくらいだ」
「ほう……それはクラス単位ではなくチームと言うことか。さすが藍原、形にとらわれないな」
慎之助が会長に褒められ、恋人の柳小路千聖は喜びに悶絶する。
「ふっ……その方が手元で守れて都合が良いからな」
会計が含みをもたせニヤリと笑った。
ムッとした千聖を目で抑え、慎之助は涼しい顔だ。
「まあ、そんな感じでいいんじゃない?どうせここのほとんどは加点なんていらないだろ?学年1~3位が生徒会に揃ってるんだ。自力で試験くらいどうにかなるし……ねえ?」
だが、生徒会長の笑顔を見たって、どうにかならない何人かは下を向く。
それなりに厳しいようだ。
「生徒会の威信にかけ、俺たち四人以外はチームになって優勝を目指してもらうしかないな」
会計が針の先のように鋭い視線で皆を見る。
「四人?」
「会長・副会長・会計に書記だ!貴様ら柳小路に何らかの“不都合”が生じた場合、藍原を止められる自信があるのか?言っておくが、俺は全くない」
会計は眼鏡のブリッジを上げ、他の生徒会メンバーを睨む。
「ま、それぞれに頑張ってよ。じゃあ解散」
会長の言葉に、皆散り散りになって駆け出した。
「ってことだから、二人はこっち組だ。クラス対抗じゃないから、のんびりイチャイチャしてなよ」
「なっ……」
真っ赤になってる慎之助と千聖を冷やかすように見つめ、会長と会計は出ていった。
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