月に叢雲 花に風(つきにむらくも はなにかぜ)

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いよいよ出番になり、全員で絆愛行進で登場。 「いくぞ!!」 美しい筋肉を見せつけ、水泳部とサッカー部が前列に並び、空気椅子の状態で待機した。 「せぃやっ!」 掛け声を合図に、前列全てが腋を鳴らしながら尻を高々と上げ、背後に回った歌留多部員が尻を打ち鳴らす。 「素晴らしい!これは本当に腋と尻だけの音色なのか……」 聞いている者は、予想外の美しさに思わず目を閉じる。 例えるなら、飛び石が水面を走るような軽やかな音から、大木が倒れ辺りに響かせたような音までと様々だ。 「いくぞっ!」 美術部員が摺り足で登場し、ズリズリ前へと前進し、尻をギュッと引き締めた。 “バキッ” 尻と褌に挟み、青竹を次々に尻圧で割る。 一本一本なら竹独特の高い音をたて割れているだけだが、彼らのはひと味も二味も違う まるで一時を忘れそうな竹林で通りすぎる風のような、コーヒー豆すら握りつぶし煎れてくれる喫茶店のような、そんな心地よさにうっとりだ。 だがいくら絆愛の生徒とて、運動部に比べては尻はネンネも同然。 時には折れた竹が刺さり、使い込まれていない桃尻は脆いものだ。 それでも、彼らは歯を食い縛り、悲鳴すらあげず成し遂げた。 血まみれにすらなった者もいるが、感動は与えられた。 「このまま一気にいくぞっ!!そぃやっ!!」 掛け声に合わせ、鍛え上げた野球部員が太い声をあげ、大きく横転して起き上がり、決められた自分の位置へとつく。 呼吸を整え、身体中を緊張させた。
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