女性とは、至極難儀な生き物だ

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なあ、由宇。 時間を戻せるとしたら、いつに戻りたい? 俺たちが出逢ったあの日? 俺が無理矢理抱いたあの日? お前がこの会社に入社してきた日? この関係が始まった日? 「婚約を…解消させてほしいんです」 俺はね、由宇が産まれた瞬間に戻りたいよ。 お前が泣いたり笑ったり、怒ったり、誰かに恋をしたり、失恋したり、そうやって成長していく、そういう日常を、一番近くで見たかった。 そしていつか、気付いてほしかった。 “結局、藤次郎が一番”だって。 由宇に、心底実感してほしかったんだ。 そしたら、ずっと一緒にいられた。一番近くで由宇を見ていられた。 誰にも邪魔されずに、由宇だけを愛していられた。 「何がわかるんだよ…」 「間宮、」 「俺と由宇の…何が、」 お前たちには、絶対わからない。 「藤次郎さん!!」 「眞由美さん…」 勢いとともに開いたドアの向こうに、婚約者と未来の義父の姿をとらえる。 背中の冷汗は、何だ。 この手汗は、何だ。 俺はまだ、弱いのか。
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