第一章

11/18
前へ
/247ページ
次へ
「おはようございます。外はこんなに灼熱だというのに、綾子先生の周りは実に涼し気で……今日も一段と美しい」 白のポロシャツにジャージを履いた男が、綾子との距離を一歩、また一歩と詰めるようにして近付いた。 角刈りの頭の下の顔に多量の汗をかき、やたらと胸の筋肉を張り出しながら向き合う佐久間は、綾子と同じ二学年、Bクラスの担任教師。 歳は綾子の七つ上、三十六才。担当教科は体育で、その暑苦しい風貌と厭らしい目付きが原因で女子生徒の反感を買っている。 「下の名前で呼ぶのはやめてください。生徒が真似します。それに、さっきの桐生くんの件はホームルーム前に、クラスの子達への言伝てを頼みたかったからです」
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

554人が本棚に入れています
本棚に追加