第一章

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「大丈夫ですか?」 災難でしたね。と、憐れむように口角を上げた弓槻が、綾子の背中を支えながら問い掛ける。 「……平気です」 「良かった」 人懐っこい笑みを浮かべた弓槻は、綾子の震えが治まるのを待ち、その体を腕の中から解放させた。 半袖の白いワイシャツに鮮やかなブルーのネクタイ。斜めに分けた前髪から覗く奥二重の瞳は濃いブラウン。飛び抜けた美男子という訳でもないが、人々を魅了する明るいオーラを持つ男。 弓槻は綾子の隣二年D組の担任で、生徒達には日々数学を教えている。歳は二十四歳。保津学園に勤める教師陣の中では一、二を争うの若手の一人。
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