第三章

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ホテルの大ホールを貸し切って行われたお見合いパーティは、総勢百名を越える大規模なものだった。 オーケストラの生演奏が優雅に流れ、ワイワイと賑わう場内の中央には、いかにも管理職風といった紳士と向かい合い、居心地悪そうに立ち話をする綾子の姿があった。 「あの、菱山物産ですか」 「ええ。営業部長をしています」 「御立派ですね」 「はははっ。とんでもない。名前だけですよ」 この日の綾子の服装は、黒のノースリーブワンピース。 胸元には大胆なカットが入り、幅広のプリーツが腰元のリボンを起点に三角形のラインを作り上げている。 ミニスカートに慣れていない綾子は、先ほどからお尻周りばかりを気にしてしまい、目の前の紳士の話に集中することが出来ずにいた。 装いを見立てたのは、ヒロエだ。
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