第一章

7/18
前へ
/247ページ
次へ
職員会議が始まる十分前。鉄柵の門を半分まで閉めた綾子の目に、なりふり構わず走り寄る一人の男子生徒の姿が映り込んだ。 「はぁっ……はぁっ……セーフ?」 「アウトよ。桐生くん」 綾子は自らの腕時計を見てから、膝から崩れ落ちた男子生徒に淡々とした口調で言う。 桐生は綾子が担任を受け持つ二年C組の生徒の一人。一学期の出席日数がギリギリだった為、進路指導の際、以後気を付けるようにと指導したばかり。 多少のお調子者ではあるが、クラスメートからの人望も厚くリーダーとしての力量も持ち合わせている彼だけに、綾子は残念でならなかった。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

554人が本棚に入れています
本棚に追加