別れ際のこと

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あるとき馬太はたまたま見舞いに来ていた時に、 菊苗と医者の会話をきいた。    医者はとても真剣な目をして菊苗に「わたしは所詮、 手助けしかできないんだ。 なにより君に生きようという意思がないと、 治るものも治らなくなってしまうよ」と言った。  菊苗はその時、 なにを考えていたのだろうか。 しばらく、 医者の顔を見つめていたかと思うと急に笑いだし、 「だって、 生きていても…」と答えてから、 おしまいまで言わずに、 また笑いだした。  医者はしばらく菊苗をじっと見つめていたが少し悲しそうな顔をして、 そのまま病室を出て行った。
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