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『リョウちゃん独り暮らしなんてできるの?』
彼女は幼馴染みだ。一つ年上のくせにどんくさくて、よく転んでは泣いてばかりいた。そのくせ歳上ぶってお姉さんっぽく振る舞ったり、俺が手を引いて歩いてるのに、
『リョウちゃんが迷子になるといけないからね…』
なんて強がっていた。かなりおせっかいの幼馴染み。
でも、その顔を見て俺は少しホッとしていた。見知った顔に安心していたのかもしれない。
『大丈夫だよ、子供じゃねーし…』
こいつの前で弱音なんか吐きたくなくて、口から出たのは強がりの言葉だった。
でも彼女はそんな俺を抱き締める手に力を込めた。
『無理しないで…リョウちゃんの顔、泣きそうだよ。ずっと見てきたんだから、隠したって分かるんだよ』
俺の腰に抱きつきながら何言ってんだ、こいつ。そう思いながら、俺の瞳からは涙が零れ落ちていた。
『ふっ、うっ…』
声にならない嗚咽が玄関に響く。
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