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むぅっと眉を顰めれば、視界いっぱいに、何かが広がった。
「う?」
《少し待っておれ。》
聞こえてきた声と共に、ふわっふわなものが当たる。
何これ?毛?柔らかくって、気持ちいーい!
「ふふっ。」
《こ、これ、ジッとせぬか。》
くすぐったくて、思わず目を細めれば、また聞こえてくる声。
なんかちょっと焦ってる?
そんな風に思っていると、視界がぐるって回って、更にもう一回まわる。
気付けば、よくわからない感嘆の声をあげていた。
「おー。」
《これで良いか?》
ふわふわな物が離れて行ったけど、どこまでも広がる緑が見えた。
なんて言うの?草原?ただ、だだっ広いだけのそこは、背の低い草がびっしりと生えた、これまた平らな地面がどこまでも続く場所だった。
「りょお?」
《ふむ。やはり、まだ、うまく喋れぬか。》
聞こえてくる声は、どこからなのか、その方角さえ分からない。
声の主を探そうとして、突然、ぐいっと引っ張られた。
《あまり動くでない。転げるぞ?》
「ふぁい。」
了解です。
大人しく、じっとしてる。というか、そうせざるを得ない状態。
何せ、首が固定されたかのように、動かないんだもん。
「んー。」
まじまじと、自分の体を見下ろす。短い手足。それがついているのは、これまたぽってりとした体。
そのどれもかもがコンパクト過ぎて、どうしても一つの結論にしか達せなかった。
「あぁやん?」
《赤子といいたいのだな?それならそうだ。》
上げた声に、やっぱりどこから聞こえてきているのか分からない声が響く。
「あんれ?」
《何でかだと?生まれて間もないからだろう?》
当然とばかりの返答。
そうですか、やっぱり、そうですか。
けれども、疑問だけは浮かぶ。
何で、自分は、赤ちゃんになってるんですかね。
「んー?」
思い返してみても、何も分からない。というか、何か、何も思い出せないような?
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