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「んんー?」
《どうした?》
聞こえてくる声に、僅かに首だけ傾げる。
あ、そういえば、この人って、誰だっけ?
《我は人では無いぞ。あえて言うなら、ウルフだな。》
人じゃなくて、ウルフ。ウルフさんじゃなくて、ウルフ。あ、つまり、狼ですか。
あれ?なら、なんで喋れてるの?
《それは、そなただからだ。》
はぁ。返事になってるようななってないような?
何か深い意味でもあるんだろうか?ちょっと、考えてみる。
えっと――うん。ごめんなさい。わかりませんでした。
というか、なんで喋ってもいないのに分かるんだろ?
《それも、そなただからだ。》
どこか、からかうような調子で言われて、やっぱり首を傾げた。
「んんんー?」
何だか、よくわからない。
はぐらかされたような気もするけど、それよりも今は現状確認が先。
「りょお?」
《集落のすぐ傍だから、安心せい、危険はおそらく無い。》
左様ですか。
目だけキョロキョロさせて、はふっと嘆息する。
《もう、疲れたか?》
はい、そのようです。
自分で座ってるわけじゃなく、何かに引っ張られている状態だけど、なんか、結構きついらしい。
《ならば、寝かせよう。》
その言葉と共に、くるんっと回る視界。
おお、何か勝手に動く。
《早く、自分で動けるように、なってくれ。》
言葉と共に、頬にかかる感触。くすぐったい。
「ふふっ。」
ふわふわの毛並みに触りながら、しばらくペロペロと頬を舐められた。
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