白い太陽

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長い髪をなびかせて、養成所の敷地内へと歩を進めるヴェルカパルドゥビツカの姿を、訓練生宿舎3階の窓からじっと見つめる者がいた。 ───帰ってきた。 そのしっかりとした足取りから、ヴェルカパルドゥビツカが無傷であることを確信する。 ───あの大富豪のカマ=ドウマがスポンサーだっていうのに。申し出を断ってきたわね。 怪我を負わずに戻ってきたこと、あるいは雇用契約を結ばなかったこと、そのどちらに安堵しているのか、否、そもそも自分は今、ヴェルカパルドゥビツカの姿を見ただけで安堵しているというのか。胸の内がかき乱されることに、ルーファは嫌悪を感じた。無意識に眉宇が寄る。 無事に戻ってきたというなら、それでいい……ざわめく心に気付かぬふりをして、ルーファは窓辺から離れようとした、その時だった。 豪奢な金髪を揺らし、ヴェルカパルドゥビツカに駆け寄る女の姿が目に留まった。 女はヴェルカパルドゥビツカに、飛びかかる勢いで抱きついた。 ルーファの右の眉がぴくりと上がった。 ───またか、シリンドリカ! 再び窓に体を向けたルーファは、今度は額を窓に押し付け、朽ちかけている窓枠を両手で掴んだ。肩までの真っ赤な癖毛は、今や炎の如く逆立っている。 ───なんのつもりだ、自分を何だと思っているのだ。特別な存在だと勘違いしているというのか。 ぎりぎりと指に力が入る。 ───ふざけるな。……ふざけるな! 食いしばった歯が、不快な音をたてた。 ───ツカちゃん先生は、私のものだ! 刹那、ルーファは我に返った。 驚き、そして狼狽した。 胸の奥に閉じ込め、知らぬふりをしていた感情が、シリンドリカの行動を目の当たりにしたことで一気に噴出した。もう、知らぬふりは出来ぬ。 ツカちゃん先生──否、ヴェルカパルドゥビツカ!
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