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「先輩、また現実逃避っすか?」
缶珈琲を両手に持ち金澤が近づいて来た。
片方の缶珈琲を受け取り、プルタブを開ける。そして、珈琲を一気に喉へ流し込んだ。
「そんなんじゃねぇよ…………考え事だ」
意固地な自分が表に出てきて、つい咄嗟に嘘をつく。図星を突かれた事実を認めるのが癪に障り、意図せず出てきた言葉だった。
「ホントっすかぁ?」
金澤が疑惑の目を向ける。
「本当だっつーの」
「まぁ、そういうことにしときます」
「しとけ、しとけ」
柵に顎を乗せ、遠くを眺める。
その物寂しげな表情を横目でみる金澤。
彼の新人教育の担当者は、何を隠そう武里だった。それ故、何かと接する機会の多い武里を年齢がそれほど離れていないからか、先輩と言うよりも“兄”のように慕っていた。
だから、武里が落ち込んでいる様を見ると何とかしてやりたいと言う気持ちになった。
そこで、金澤はある提案をすることにした。
「先輩、実は俺、ある占い師の所に行ったんすよ」
「占い?」
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