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「ふむ…………これはっ」
「な、何が見えたんですか?」
スッと手を下ろして、占い師はこう告げた。
「近い将来、貴方は富と権威を得るでしょう」
「富と権威…………」
占い師の言葉に武里は生唾を飲む。
「それにより、貴方のご家族も幸せになり、貴方自身の夢も叶うでしょう」
夢、その言葉に武里は胸を打たれた。過去、幼き頃夢見たものになれる。そう思っただけで武里の気持ちは晴れやかなものとなった。
続けざまに占い師が言う。
「しかし、そのためにはある事をしなくてはなりません」
「な、なんですか? そのある事とは」
占い師の口元が怪しげに歪む。
「難しい事ではありません。貴方に与えられる試練を乗り越えるだけです」
「試練ですか…………?」
「そうです。では、早速、その試練を始めましょうか。付いてきて下さい」
占い師が席を立ち、歩いていく。その後を追うように武里も立ち上がり付いていった。
この時、武里は自身の人生の崩落と降り掛かる災厄を知るよしもなかった。
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