1ー2

7/9

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「ふむ…………これはっ」 「な、何が見えたんですか?」  スッと手を下ろして、占い師はこう告げた。 「近い将来、貴方は富と権威を得るでしょう」 「富と権威…………」  占い師の言葉に武里は生唾を飲む。 「それにより、貴方のご家族も幸せになり、貴方自身の夢も叶うでしょう」  夢、その言葉に武里は胸を打たれた。過去、幼き頃夢見たものになれる。そう思っただけで武里の気持ちは晴れやかなものとなった。  続けざまに占い師が言う。 「しかし、そのためにはある事をしなくてはなりません」 「な、なんですか? そのある事とは」  占い師の口元が怪しげに歪む。 「難しい事ではありません。貴方に与えられる試練を乗り越えるだけです」 「試練ですか…………?」 「そうです。では、早速、その試練を始めましょうか。付いてきて下さい」  占い師が席を立ち、歩いていく。その後を追うように武里も立ち上がり付いていった。  この時、武里は自身の人生の崩落と降り掛かる災厄を知るよしもなかった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加