ある雨の日

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 水気を孕んだ冷たい空気と、僅かに窓を打つ雨粒の音に目を開ければ、時間は既に午後三時だった。  ああ、今日は少し早く起きて、新しい音源を探そうと思っていたのに。もうこんな時間か。  寝ぼけ眼を擦りながら、取り敢えず何か音を流す。ベッドの中で聴く、スラング混じりのアンソニーの歌。そう言えばこれは、あの映画の挿入歌だったな。劇場で観た後、アイツは良く判らねえとぼやいていたが、俺は結構面白かった。  それにしても。  意識が目覚めるにつれ、寒さが増してくる。二人で寝ると裸でも暑いのに、一人寝は何でこんなに寒いんだ。  隣に寝てた筈のアイツは既に起き出して、居間をガタガタ掃除している。ついでに昨夜脱ぎ散らかした、脱皮したヘビの皮みたいな俺の服も、片してくれたら良いのに。  薄い上掛けにくるまり惰眠を貪る。寒いから耳の上まですっぽり埋まると、一人でも少し暖かい気がした。  隣ではようやく掃除が終わったみたいだ。聞こえていた機械のノイズが消えると、こちらの流す曲に気付いたんだろう。少しの間の後、部屋のドアがゆっくり開いた。 「起きたか?」  何も答えずベッド埋まっていると、そっと近づく気配がする。もうすぐ三時半だと声を掛けられて、初めて薄く目を開けた。
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