第11章 最後の嘘

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自分の夢。自分の未来。見失ってはいないつもりだったけど。けいちゃんとの結婚話が出た頃から、それはあたしだけの夢じゃなくなってた。 自分を信じて、支えてくれる人の存在は嬉しいし、頼もしい。けど逆にそれが失敗出来ないプレッシャーになって、あたしをがちがちにしてしまったのかも。 受験に失敗したら、夢もけいちゃんも失ってしまうみたいで怖くて怖くて堪らなかった。 「どうせ貴女、センターと本試験併願なんでしょ?」 「…そうです。でも、いちばんの本命は国立だったから…」 国立はもう無理かな。でも、確かに私大の方は、センター試験利用入試と個別入試に分かれてることが多い。受ける予定の大学は、両方出願してる。 「じゃあ、個別入試気合いれて頑張るしかないんじゃない? タイムマシンは人類最大のタブーらしいわよ、あいつに言わせれば」 「へ? タイムマシン?」 「そ。人間は過去には戻れないんだから。くよくよしても、もうしょうがないじゃない。昨日の試験のことより、来月の個別入試のこと、考えなさい」 「…はあ」 無茶苦茶だけど、慰めてくれてるのだろうか…。 「ありがとう…」 ございます、と頭を下げかけた時だった。校内放送のアナウンスが流れる。 「――3年4組春日千帆。いたらすぐに、教室まで来なさい」 普段よりかなり低いけど、け、けいちゃんの声だ。やっばい。お、怒ってる? つーか、HRサボっただけで、校内アナウンスで呼び出しって、激ハズ。 けいちゃん。職権濫用。
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