第11章 最後の嘘

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重たい足取りで、教室に入ると、みんなセンター試験の答え合わせや感想言い合ってる。この中で、あたしがいちばん得点低いかもしれない。 「おはよ」 「あ、おはよ」 七海に肩を叩かれて、ぎこちなく笑い返した。 「どした? ちぃ」 「…あたし、大学行けないかも…」 教室の空気が嫌で、あたしは廊下に飛び出した。隣のクラスの本田先生にぶつかった。ってことは、もうSHR始まるのかな。 逃げるように体育館の裏まで走った。ポケットの中の御守をぎゅっと握る。けいちゃんに貰ったピンキーリングも入ってて、装飾のハートが掌に食い込んだ。 けいちゃんに、合わせる顔、ないよお。 高い壁の裏側に隠れて座り込んでいたら、砂利を踏む音がした。 「あら」 あたしの耳に聞こえてきたのは、高い女の人の声。泣きっ面に蜂、ってこういう状態を言うのかも。 「みつ…小野…せんせい。何で…」 半泣き顔のあたしを、みつきさんが見下ろしてた。あーもう最悪。 「昨日、ここでピアス落としちゃったみたいなのよね」 舌打ちでもしたい気分のあたしに構わず、みつきさんは腰をかがめながら、砂利の中に目を光らせた。 小石の間に、金のリングのピアスを見つけて、みつきさんは満足そうに拾い上げ、埃を払う。 「…どうしてここでピアス落とすんですか?」 「やだ、聞かないでよ」 あーはいはい、聞きませんよ。別にけいちゃんじゃなければ、あたしには関係ないし。 「あなたこそ、こんなところでサボってていいの?」 「…授業までには戻ります」 さっき、HR始まりのチャイムが聞こえた。…けいちゃん、あたしの空席見つけて、どう思うのかな。生まれて初めてだ。HRサボったのなんて。 「ああ」 あたしの答えにみつきさんはくすっと笑う。 「つまり、慧史に会いたくないんだ」 どうせ、当てられちゃった答えに、返事なんかしたくない。子どもっぽいとまた笑われると思ったけど、あたしは膝を抱えてそっぽを向いた。 「ケンカでもしたの? だったら、あたしにもチャンスかしら」 …ちょっと。体育館裏で、ピアス落っことす程のことしてた相手は? 「違いますっ。――センター、ボロボロだったから…けいちゃんに、会いたくない」
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