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重たい足取りで、教室に入ると、みんなセンター試験の答え合わせや感想言い合ってる。この中で、あたしがいちばん得点低いかもしれない。
「おはよ」
「あ、おはよ」
七海に肩を叩かれて、ぎこちなく笑い返した。
「どした? ちぃ」
「…あたし、大学行けないかも…」
教室の空気が嫌で、あたしは廊下に飛び出した。隣のクラスの本田先生にぶつかった。ってことは、もうSHR始まるのかな。
逃げるように体育館の裏まで走った。ポケットの中の御守をぎゅっと握る。けいちゃんに貰ったピンキーリングも入ってて、装飾のハートが掌に食い込んだ。
けいちゃんに、合わせる顔、ないよお。
高い壁の裏側に隠れて座り込んでいたら、砂利を踏む音がした。
「あら」
あたしの耳に聞こえてきたのは、高い女の人の声。泣きっ面に蜂、ってこういう状態を言うのかも。
「みつ…小野…せんせい。何で…」
半泣き顔のあたしを、みつきさんが見下ろしてた。あーもう最悪。
「昨日、ここでピアス落としちゃったみたいなのよね」
舌打ちでもしたい気分のあたしに構わず、みつきさんは腰をかがめながら、砂利の中に目を光らせた。
小石の間に、金のリングのピアスを見つけて、みつきさんは満足そうに拾い上げ、埃を払う。
「…どうしてここでピアス落とすんですか?」
「やだ、聞かないでよ」
あーはいはい、聞きませんよ。別にけいちゃんじゃなければ、あたしには関係ないし。
「あなたこそ、こんなところでサボってていいの?」
「…授業までには戻ります」
さっき、HR始まりのチャイムが聞こえた。…けいちゃん、あたしの空席見つけて、どう思うのかな。生まれて初めてだ。HRサボったのなんて。
「ああ」
あたしの答えにみつきさんはくすっと笑う。
「つまり、慧史に会いたくないんだ」
どうせ、当てられちゃった答えに、返事なんかしたくない。子どもっぽいとまた笑われると思ったけど、あたしは膝を抱えてそっぽを向いた。
「ケンカでもしたの? だったら、あたしにもチャンスかしら」
…ちょっと。体育館裏で、ピアス落っことす程のことしてた相手は?
「違いますっ。――センター、ボロボロだったから…けいちゃんに、会いたくない」
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