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何で、あたし、この人にこんなこと言ってるんだろう。
反射的に、誰にも言えなかった本音をぽつりと零してしまってた。でも、みつきさんは、あたしの言葉の意味がわからないというように小首を傾げる。
「どうして? 一生懸命やった結果なら、慧史、怒ったりしないでしょ?」
「怒らないとは思うけど…でもがっかりすると思うから」
自信なくぼそぼそ喋るあたしの言葉を、みつきさんは豪快に笑い飛ばした。
「やあだあ、変なの」
「え?」
「だって、それじゃ春日さん、慧史に褒めてもらいたくて、受験するみたいじゃない?」
「あ…」
あれ? ずっと出口を塞いで、内に内にこもってた心に、すうっと風穴が開いたような気がした。
「ねえ、貴女はどうして大学行きたいの? 教育学部志望――だっけ? 慧史のあと、追っかけたいだけなの?」
あたしは…あたしの気持ちは…。
教師になりたい、って志望は、最初はけいちゃんがきっかけだけど、けいちゃんに褒めて欲しいとか、真似したいとかじゃなく。
純粋に、あたしが何かを子どもに教えたい、伝えたいと思ったから。
「小野、先生…もし、けいちゃんがイギリスに『行くな』って言ってたら、どうしてました?」
「どうもしないわよ。付き合ってる男に止められたくらいで、やめるわけないじゃない。慧史もそれはわかってたから、言わなかったんでしょうよ」
きっぱりとすっぱりと、みつきさんは言い切る。「ま、そのまま切り捨てられるとは思ってなかったけどね」
何処までも自信家のみつきさんらしい判断ミスを、それでも今はもう、悔いてはいないんだろう。
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