第11章 最後の嘘

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慌てて戻ると、けいちゃんは教室前の廊下に腕組みして立ってた。 「来てても、出てないんだから、春日遅刻――な」 名簿でぽんと頭叩いて、けいちゃんはちょっと怒った口調で言う。 「はい…先生、あの」 じぃっと上目遣いにけいちゃんを見た。ごめんなさい。謝ろうとして、言葉が止まった。何を謝ろうとしてるんだろう、あたし。HRサボったこと? センター失敗しちゃったこと? あたしの言葉の続きを待ってるみたいに、けいちゃんも黙ったまんま。沈黙を1時間目始まりのチャイムが引き裂いた。 「タイムアウト、だな。――放課後、進路指導室来い。話聞いてやるから」 そう、言い残してけいちゃんは行っちゃった。あたしがあんなに怯えてたのに、あっさりと呆気無く。 「ちぃ、大丈夫? 出てったまんま戻って来ないから、心配したよ。探しに行く、って言ったのに、遠藤ちゃんはいい、って言うし」 席に戻った途端に、七海が話しかけてきた。 「ごめん。昨日の結果散々だったから…なんか、教室いづらくて」 「気にしない気にしない。たった試験1回で、ちぃの全てが評価されるわけじゃないんだから」 七海の励ましに、また心がひとつ軽くなった。 ガラッと教室のドアが開いて、1時間目の数学の本田先生が入ってきた。授業内容は、昨日のセンターの解法と応用。あー、ホント、教室でじっくり考えれば、わかる問題だったのに。 自己採点をつけながら、やっぱり後悔してしまった…。 放課後、おずおずと進路指導室に入ると、けいちゃんはもう待ってた。
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