第11章 最後の嘘

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新年のカウントダウンは、ヘッドホンでラジオを聴きながら迎えた。 あー、年が明けたんだ…と思って、走らせてたペンをノートの上に転がして、椅子の背もたれにぐっと体重を乗せる。 椅子ごと傾いたあたしの身体。見上げても、目に移るのは、18年暮らした家の天井だけ。 でも、たとえば。 来年のあたしは、何処で誰と新年を迎えるのだろう。 けいちゃんと?? ?あの、家で? 学校がないからいいや、とはめっぱなしの、けいちゃんから貰った指輪は、確かな未来への約束。 うん。これがあるから、頑張れる。 ぬるくなった珈琲を飲んでたら、スマホがピカピカ光ってた。 七海と酒井くんからのメールだった。 七海のは、普通のあけおめメールだったけど、酒井くんのメールにあった、今年の目標、彼女を作る!!!に、くすっと笑いが漏れた。…受験合格じゃないんだ。 けいちゃんは…、けいちゃんは30日の夜から実家に帰るって、言ってたな。 帰って、あたしとのアレコレ報告しないと…って、出発前夜、電話でそんな話をした。 「お父さんもお母さんもびっくりするよね」 うちのお父さんみたいに、度肝抜かして、パニックになって、反対されたりしないのかな。 不安になったあたしに、けいちゃんは大丈夫だよって、笑う。 「結婚したいことも、その相手が教え子だってことも、もう伝えてある。今回報告するのは、無事千帆の両親の承諾を取り付けました、ってことだから」 そ、そっか、良かった。 「反対とかしないんだ」 「うちの親は、自分の責任でやるんだったら、自分の好きなようにしなさい、って感じだからねー、千帆のとことは違うかも」 それは社会人の親だからか。それとも三人兄弟だからか。 まだ会ったことのない、けいちゃんのお父さんとお母さん。どんな、人たちなんだろ。
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