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「起きてたんだ。偉いね、千帆」
いーえ。寝こけてました。でも、そんな不都合なこと、今言う必要ない。
年が明けての初めてのけいちゃんと、こんなドラマチックに会えるなんて。
大好きな映画みたい。
「待ってて、けいちゃん」
あたしはコートを羽織って、焦りまくって階下に降りる。あ、やばい。
しんとなった家で耳を澄ませても、他の物音はしない。良かった、お父さんもお母さんも起きてない。
ちょっとだけ、ちょっとだけ、ごめんなさい。お父さん、お母さん。
心の中で謝りながら、そうっと玄関の戸を開けて、家を出たら、車のボンネットに浅く腰かけて、けいちゃんが待っててくれた。
会えるなんて思ってなかったから、ドキドキして、言葉が見つからないあたしに。
「明けましておめでとう」
けいちゃんは、呑気に言う。あー、なんか拍子抜けする。でも、けいちゃんらしくて、笑っちゃう。
「おめ、でとうゴザイマス。帰ってきてたんだね」
「まだ帰宅途中。年賀状と御守り、千帆の家のポストに入れて帰ろうと思ってたんだ。まさか出てくると思わなかった」
さっきポストに入れたそれは、いつのにかけいちゃんの手に戻ってて、けいちゃんは直接あたしの手に葉書と白い封筒を持たせた。
白い封筒の中には、あたしの知らない神社の御守が入ってた。薄い桜色に金糸で学業成就って書いてある。
「うちの地元のなんだ。高校受験も大学受験も、俺ここにお参りしてうまく行ったから」
年賀状の方は、大きな写真に一言だけ。今年もよろしく。って、ありきたりなメッセージ。
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