第11章 最後の嘘

9/37
前へ
/37ページ
次へ
新学期。けいちゃんの腕に、あたしがクリスマスにあげた時計が嵌められてるの見て、思わずニヤケそうになって、慌てて顔引き締めた。 受験勉強のし過ぎか、みんなどことなく疲れた顔してる。話題も誰が何処の大学狙ってるとか、センター試験受けるとか受けないとか、受験のことばかり。 中学の時も受験はしたけど、高校受験は、内申点の割合も高くて、担任の先生も安全圏の学校しか勧めて来なかったから、よっぽどのことがない限り、大丈夫…って言われてた。 でも、今度はほぼ一発勝負だし、誰も太鼓判なんて押してくれない。一ヶ月後のあたし、どうなってるんだろ…。 試験の始まりを告げるチャイムが鳴って、一斉にみんなが問題を解き始める。カリカリカリカリ。シャーペンの芯が、紙の上を走る音がすごく耳障り。 自分も同じ音立ててるのに、人の音が、早く大きく聞こえる。みんな、問題解くの早い。 焦って、問題読むんだけど、目が滑って、なかなか集中出来ない。あ、これ、この間やったのとおんなじ…でも、どうやって解くんだっけ。 あー、どうしよう、この問題に5分も掛けちゃった。わかんない問題あったら、飛ばして先行った方がいい、って言われてたのに。気が付くと、試験時間は残り半分だ。 気ばかり焦って、脳みそは回転してくれない。 半分とちょっと答えを埋めたところで、試験終了のチャイムが鳴った。 目覚ましのアラームが鳴って、あたしははっと飛び起きる。 夢? 今の夢だよね? 脇にも背中にもびっしょり汗をかいてた。嫌な、夢。 ふうっと大きく息をついて、思い出す。夢じゃ、ない。昨日の記憶だ。 センター試験、あたしは大失敗した…。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

272人が本棚に入れています
本棚に追加