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承の章
怪しい女性は静かに口を開き、
「すいません、本条さんのお宅でしょうか?
私、榊 雄太さんの会社の者で里香と申します。
本条さんにお話がありまして、お伺いしました。」
いきなりの見ず知らずの女性の訪問で、最初は懸念した千夏だったが
雄太の会社の関係者ということで、完全にスルーすると
雄太にも迷惑がかかると思い、しばし考えた後に返答した。
「はい、そうですが、どのようなご用件ですか?」
「ちょっと、ここでは話せないので、迷惑じゃなければ、ちょっと中で話せませんか?
お時間とお手数は、なるべくかけませんので・・・。」
見た目とは違い丁寧な口調なので、いささか恐る恐るではあるが、
ドアを開け、会社関係者ということもあり、玄関先で対応するのも・・・
と思い、雄太が帰ってくるまで居間に通すことにした。
とりあえず、自然体でっと頑張る千夏だったが、
さすがに動揺した表情は、隠し切れないまま向き合いながらソファーに
腰かけた。
しばしの沈黙を破ったのは里香だった。
「・・・すいません、初めに確認させて頂きたい事があるんですけど?」
「は、はぃ?」
「千夏さんは雄太と、どのくらいの期間、交際していらっしゃるのでしょうか?」
初対面で突っ込んだ質問に、
やや動揺しつつも、千夏が出遅れて答える。
「あ、・・・。はい、そうですね・・・。この前が交際記念日だったので
ちょうど2年くらいになります。
婚約も、その時に・・・それが何か?」
その質問の唐突さと意味を分からないまま千夏は、
ますます表情を曇らせながら話した。
「・・・そうですか、それはそれは・・・。」
そう言うと、ぶっきらぼうに里香は、
何度か頷いた後に大きめなトートバックから、
【金森興信所】の印刷文字の茶封筒と中から
押印してある書類、そして何枚かの写真を取り出した。
その写真を見た時、千夏は、ギョッとした。
その写真は、どれも雄太と千夏が仲良く歩く姿を撮影された、
いわゆる盗撮されたものだったからだ。
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