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起の章
---某月15日(月)---
まだ少し春先の肌寒さが残る日に、千夏は、休日出勤を終えて帰ってくる雄太のために、
昼食の準備をしていた。
リビングには、千夏の手慣れた美味しい料理の匂いが漂っている。
もう料理の仕込みが終わろうとする頃、千夏のスマホが鳴った。
着信画面の【雄太】の文字を見て「待ってました♪」とばかりに千夏が微笑み
電話に出る。
「ハイハイ~」
「あ、もしもし、俺だけど・・・もう仕事終わるから、 これから帰るね。」
「うん、わかった、どれくらい?」
「2~30分くらいかな?」
「ふぅ~ん。今日は、あの綺麗な先輩のお付き合いはないの?」
と、前日の飲み会での女の先輩の話を根にもった千夏が勘ぐる。
「え?ああ、麻衣先輩かあ。今日は休みだし、別にちょっと仲良くしてくれてるだけだよ、
婚約してから神経質になってんの?俺は千夏だけだってぇ」
雄太から聞きたかった言葉で、千夏はご機嫌な様子になり
「そっかぁ、うん、わかった!じゃあ~ゴハン用意して待ってるね♪」
と言って電話を切った。
ルンルン気分で残りの支度を千夏が始めようとすると、
ふいに玄関のチャイムが鳴る。
雄太にしては早すぎるから、
勧誘かセールスだろう?と思い
千夏はドアの覗き穴から、そぉ~っと覗き見した。
すると
見覚えないが、あきらかに勧誘やセールスとは違う雰囲気を
醸し出して、外見に無頓着であろう怪しい女性が立っていた。
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