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どっかのレストランでご飯食べて帰ろうか?」
「いくいく!」
そこから少しだけ走らせて、一番近くにある厚切りステーキが売りのファミレスへ車を滑り込ませていった。
運ばれてきた特大ハンバーグを翔大は夢中でかぶりつく。お子様ランチではなく大人用のメニューから注文したので三歳児には多すぎる量だが、偏食の激しい翔大は肉とポテト以外は食べないので特大サイズでもいつもあっさり平らげてしまう。
「ちゃんとフォークを使いなさいよ」
美雨はその様子に目を細めながらグラスワインを飲み、自分の料理を待つ間にスマホを取り出しチェックする。夫の勇作に宛てたメールに対する返信はまだ来ていなかった。もう三時間以上経つというのに、あれだけ返信してちょうだいって頼んだのに。手元にスマホを置き、指先でせわしなくテーブルを叩き続ける。
運ばれてきたサーロインステーキを食べながら美雨はスマホに着信が入るのを今か今かと待ち侘びていたが、一向に電子音は鳴り響かない。ハンバーグを全て食べ終えた翔大は満足したのか、フライドポテトを折ったりテーブルに飛ばしたりしながら少しずつ食べている。返信が来ないことに業を煮やした美雨は食事を終えるなり、次の手を打つことに決めた。
「ねえ、翔大。パパに電話してみようか?」
「パパに? うん、する!」
美雨はスマホを操作して勇作の電話番号を引き出し、コールする。
「ほら、もうすぐパパが出るわよ」
翔大は小さな耳にスマホを当てた。
「あ、パパ? しょうた。うん、うん、げんきだよ……きょう? ほいくえんいってたよ。うん、うん……」
「ねえ、そろそろママに代わってくれる?」
「ママがかわってって」
美雨は真剣な面持ちでスマホを引き取る。
「あたしよ、お元気?」
『ああ、まあ何とか』
返事の割には勇作の声音に活気は感じられない。
「返信を待っていたんだけど」
『……ごめん』
「メールに書いた通り、一度ゆっくりお話したいんだけど」
『会っても、俺の気持ちは変わりませんし』
「でも、あたしとしてはもう一度やり直したいの」
『……それは無理』
「ねえ、もう一度考え直してみてよ」
男としてのあなたにはもはや何の未練もないけど夫としてのあなたにはまだ120%、いえ、10、000%の執着が残っているのよ。あなたには、あたしと翔大のために最後の最後まで体を張ってもらい、あたし達の未来を
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