石塚 はじめ

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「え? あんな目立つ子居ないよ。てっきりはじめくんのクラスだと思ってたんだけど……」  小谷の言葉に、はじめは少し瞳を泳がせた。  自分は長らく保健室登校だが、体育の授業を見学している時には姿を見かけなかったと思う。だからてっきり隣のクラスの子だと思っていた。何せ田舎の小さな学校だからクラスは二クラスしかないし、一クラスもせいぜい三十人程だ。その半数が大体男子生徒だったとして、その中に彼が居れば目立つと思う。だってあまりにも彼は男の子にしては可愛らしい顔をしているからだ。 「て、転校生が来たなら、噂くらいは、なると思、うんだけど……」  それを聞いた小谷は何かを考える様な素振りをしていた。転校生だったならきっと、幾ら保健室登校だったとしても噂を耳にするだろう。それが無かったと言う事は元々自分達と同じ様に中学に入学して来た事になる。二年に上がる時にクラス替えがあったが、その時にも気付かなかった。そんな事が本当にありえるだろうか? 体育祭や文化祭など、幾らでもクラスが合同になる機会はあったはずだ。 「……そうだね。確かに少しおかしいかも」  小谷は少し青い顔をしていた。僕も、考えたくはないが無意識にその結論へ急ごうとしてしまう。  彼は七不思議に出てくる一番目の怪談なのでは無いか? と。 「ぼ、僕、思うんだ、けど、み、明神くん、て、幽霊、なのかな?」  幽霊の存在を否定する証拠を持ってくる様に言われていながら、そんな事を口にするのは自ら負けを認めるようなものだった。 「そんなのあるわけ無いでしょ。きっと明神くんが嘘付いてるんだよ。例えばほら、隣町の学校から遊びに来てるとか……」  それはありえないだろうと思ったが、小谷がそう言うのでその場では頷いて見せた。隣町の中学校まで車を飛ばしても二十分はかかる。そんな所へ、部活のためにわざわざ来る生徒が居るだろうか? そもそも、彼がこの部活へ入部した目的は一体なんだろう? 二人はそのまま沈黙してとぼとぼと静かな階段を歩いていた。  はじめと小谷が二人で玄関へ向かうと、ふとはじめは今日渡されたプリントを保健室に忘れた事を思い出した。小谷が玄関で靴を履き替えている姿を見ながら言葉を探す。
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