幽霊研究部

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 放課後私たちはいつもその教室に集まって話しをしていた。とても笑いの耐えない楽しい時間に、居もしない幽霊の話しで盛り上がるのが私たちの部活だ。――私たちにとってとても異質な彼が入部して来るまでは。  小谷 涼子が自慢の長い黒髪をかき上げると、左目の横にある泣きホクロがちらりと顔を出した。 彼女は霊の存在は一切信じていない。怖い話しや怪談は大好きだが、みんな作り話しだと知っている。誰も本気になんかしていない。だから面白おかしくあざ笑ったところで誰からも叱責を受ける筋合いなんてない。そんな人たちが集まったのがこの幽霊研究部だ。教室の真ん中に机を六つくっ付け、その周りに椅子を並べてそれぞれ座っている部員の顔を一人一人見つめながら今日はどんな話しが出てくるのだろうかと少しワクワクする。 「なあなあ聞いたかよ? 例の山で白骨死体だって。地元じゃあの鬼の仕業だってもっぱらの噂」  涼子の目の前に座っている小麦色の肌をした松岡 達樹がそう話しを切り出した。いつも元気で噂好きな男の子で、特にこの手の話しには興味があるらしい。小麦色の肌は小学校の頃にサッカークラブに入っていた時に日焼けしたものが抜けきらないまま中学に入学したあとだ。元々細い目を一層細くして目じりに皺を寄せながら隣に座っている由美を見つめている。 「田舎だよねぇ。まだ鬼とか信じてるんだもんねぇ」  松岡の右隣に腰掛けている一瀬 由美が馬鹿にしたようにせせら笑った。その時に赤茶げた短いショートカットの髪が揺れる。正直言って由美は目立つ存在だった。私から見ても背が低くて華奢で可愛いし、隣に座っている同い年の松岡も由美にぞっこんだ。けれども由美は気付いていないのか相手にもしていない。松岡がサッカー部に入部せずにこの部に入ったのは多分由美目当ての事だったのだろう。 「でもさ、願いが叶うんならそんな美味しい話しないじゃん! 学校の成績を上げてください~とか!」 「あ~それね。僕が幼稚園の頃にも流行ってたよ」  松岡が楽しそうに身振り手振りを加えて語ると、一番上座に座っている部長がバカにした様に笑う。唯一の三年生、山崎 博は温厚そうだが非科学的なものはきっぱりと否定する男だ。黒縁の四角いスクウェアメガネが余計知的な印象を与えるのだろう。
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